細胞医薬開発
当社は体細胞からOct4/Nanog陽性で多分化能を持つ幹細胞を作製する新たな手法(特許出願中)を開発しました。この技術で患者さん自身の細胞から各種臓器の前駆細胞を作製し、その細胞そのものを医薬品として投与し、ケガや疾患により傷ついた臓器機能を修復する治療に応用したい考えです。
開発したのは、独自素材であるCEペプチドを細胞ニッチ因子として用い、線維芽細胞を3次元培養し、遺伝子導入を必要としない方法で幹細胞に初期化して、各種臓器の前駆細胞に分化誘導を行う「ダイレクトリプログラミング」の一種です。
従来技術のiPS細胞を用いた再生治療では、遺伝子導入を伴うことによる腫瘍形成リスクと、iPS細胞樹立に数か月の時間を要するコスト、他家移植に伴うマイナー抗原起因の免疫拒絶などが解決すべき喫緊の課題と言われています。一方、間葉系幹細胞による細胞治療では、脂肪組織や歯髄などからの分離法の開発と、細胞医薬品として規格化と法整備の進展と相まって急速な応用拡大が見込まれています。しかしながら、間葉系幹細胞は分化する臓器が限定的であることから、適応疾患を広めた治療検証が急がれています。
今回当社は、線維芽細胞に遺伝子導入をすることなく、およそ3〜4週間の培養期間で多分化能を有する幹細胞の作製方法を開発しました。腫瘍形成リスクを回避できることはもとより、患者さん自身の細胞を使うことで免疫拒絶リスクを低減し、しかも短時間で作製できる製造コスト低減が競合技術に対する優位性となります。
今後の事業化に向けて、大学・医療機関との共同研究で医学的POCの確立を進めるとともに、事業会社との協業体制で医療実装を進めたい考えです。
細胞培養診断
患者さん自身に提供いただいた細胞を体外で培養して、病態モデルを培養容器の中で再現する新しい手法です。たとえばがん治療の領域では、手術検体から提供いただくがん細胞/組織に直接治療薬候補を振りかけて効果と副作用の予測を行います。同時に細胞/組織の統合オミクス解析を併用し、疾患要因と薬剤反応メカニズムを分子レベルで解析して、患者個人に最適な治療薬を選択するものです。この技術は未だ治療法の無い希少疾患や希少がんの診断に応用が考えられます。
今後の事業化に向けて、大学や国立がん研究センターとの共同研究で医学的POCの確立を進めるとともに、事業会社との協業体制で医療実装を進めたい考えです。